黒猫頑迷亭　くろねこ◇がんめい◇てい　KURO-NEKO-GAMMEI-TEI

H16.7.9

高校2年生の頃、それまでとは別の方法で学校をサボり、上野の公園へ行った。別の方法と言うのは、それまでは学校をサボる時は仮病をつかって自宅に居たが、その時初めて、朝親に学校に行くといって家を出て学校へ行かなかった。私はそのままJR千葉駅から電車に乗って上野で降り、国立西洋美術館の近くの公園をふらふらした。

特別上野に行きたかったわけでも美術館に行きたかったわけもなく、普段居る場所から離れたかっただけだった。子供のとき親が西洋美術館に連れてきてくれたことがあったし、当時の部活の先生が上野出身で案内してくれたことがあって、上野は僕にとって実家からほどよく離れていて、かつ、比較的安心できる場所だった。

上野のどこだったかわすれたが、別にいい場所ではなかった。空は曇っていて、すこし強い風があって枯葉が舞っていて、延々と時が止まったように抱き合う一組のカップルと、酔っ払いながらフラフラと自転車にのりながら、「なんか違うんだよなあ～」と何故か叫んでる浮浪者風のじいさんが居ただけの、どこかの寂しい公園の広場だった。

しばらくそこに居たが、何も面白いことはなかった。「なんか違うんだよな～」というのは、その通りだった。

午後になって、家に帰ると母親に「もしかして・・・、学校行かなかったでしょう？」と聞かれた。「学校から連絡来た？」といったら、「こないけど、」といった。私が、「行かなかった」と本当を言ったら、「やっぱり」といった。「なんでわかった？」、「ちょっと様子がおかしかったから」。

学校をサボっていったのが上野の寂しい公園というのは、なんともショボイ話だけど、行くところを求めているという意味で、今日の僕もあの頃とあまり変わりないような気がする。