2007年7月4日(水)


それでも生きる子供たちへ

 

「それでも生きる子供たちへ」は、7つの国(ブラジル、イギリス、アメリカ、セルビア・モンテネグロ、ルワンダ、イタリア、中国)の子供たちの現状を、それぞれの国、地域の映画監督が15分程度の短編映画にしたものをまとめた、オムニバス映画である。

イタリアの女優と映画監督ステファノ・ヴィネルッソ(イタリアパートを担当)の呼び掛けに、アメリカのスパイク・リーやサラエボ生まれのエミール・クストリッツァなどといった著名な映画監督達が応えて作られた。イタリア外務省やユニセフ、国連食糧計画といった国際機関も、この映画に参加している。

映画の中には、ルワンダのゲリラ部隊の兵士の少年や、貧民街で缶などのゴミを拾って業者に売って生活しているブラジル人の兄妹など、過酷な現実を背負った子供たちが登場する。でも、どの話にも共通して、そんな状況でも彼らなりに楽しみを見つけようとする姿が描かれている。それは、映画を作った人のメッセージかもしれないし、そんな状況でも楽しみを見つけて生きようとする姿を映したのかもしれない。また、子供たちの現状に、国の現状も透けて見える。ブラジルや中国の貧富の大きさ、観光と車の渋滞が日常的なイタリアなどである。特に、ブラジルの貧民街と高層ビルが一つのカメラの中におさまる図が、象徴的に登場している。


私が一番印象に残ったのは、スパイク・リーが監督したアメリカの短編である。

主人公は、小学校高学年くらいの黒人の少女。彼女はアパートで両親と一緒に暮らしている。しかし両親は麻薬を常習しており、エイズ患者でもあった。それを周りが知って、彼女は学校でエイズ・ベイビーと呼ばれていじめに遭う。友達の母親が、自分の子どもと彼女を一緒にさせるなと学校に抗議に来る。そして、彼女は両親から、自分もエイズにかかっていることを知る。病気と偏見で、彼女は絶望にくれる。しかし、彼女は両親に連れられて、あるコミュニティの門を叩く。そこには、同じように病気の偏見で苦しんでいる同世代の人達がいた。その輪に入ったところで、この物語は終わる。

この最後のシーンに、私はとても希望を感じた。自分もエイズであることを知り、いじめや迫害を受けた少女が、社会のなかで居場所を見つけたからなのだろう。また、このアメリカの家族も貧しかったのだが、しかし他の国の子どものように一見貧しそうには見えなかった。豊かに見える国の中の貧しさもまた、印象的だった。


私は、1000円で見られるので、日曜日の最終回に見に行った。休みで安いというのはあったけれど、結構お客さんは入っていた。私のような20代に見える客が意外と多かった。

渋谷のパルコ近くの映画館「シネマライズ」でやってるので、興味のある方はどうぞ。

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