2008年4月17日(木)

 

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

 

見る前にサウンドトラックを買ってしまった、映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』。早く見たいと思って募集されていた試写会に応募しまくったら運良く当たり、昨日試写会で見てきました。

この映画は、20世紀初頭のアメリカ・カリフォルニアで、石油の採掘で財を成す男、ダニエル・プレインビューの一代記です。彼は、時には頭を使い、時にはその豪腕で、自らの石油事業を広げていきます。その彼にポールという青年が現れ、石油のありかを教えると言って、大金を要求します。ダニエルは伝えられた通りにその地を訪れ、石油を発見し、土地の所有者から安く買おうと試みますが、そこで地主の息子でポールの弟イーライが、自分の教会の建設のためと、彼もダニエルに大金を要求します。それもダニエルは受け入れ、この地に採掘所を建設するのですが…。彼は、心ではイーライを軽蔑しているのでした。

基本的に、ダニエルにまつわることで話が進んでいきます。最初から中盤までは所々で事故が起きます。採掘という危険な作業が語られているのでしょうか。また事故がきっかけで、ダニエルと彼の息子(実は孤児)やイーライとの関係が微妙に変わっていきます。2時間38分の長丁場で、少しずつ話が進んでいきます。特に話に起伏があるわけではなく、一場面の中で会話が途切れて少し沈黙があったあとに、また会話が始まったりするので、(ちょっと現実的ですが。)うまく話しに入れないとつまらないと思うかもしれませんし、正直、これは見る人を選ぶ映画だと思います。音楽や映像表現など、とてもアーティスティックな映画なので。これはすでに見た方がブログで書かれていましたが、スタンリー・キューブリック映画のような印象を持ちました。(といっても、私は『2001年宇宙の旅』しか見たことがないのですが。)

また、イギリスのロックバンド「レディオヘッド」のギタリスト、ジョニー・グリーンウッドの作曲した音楽が、ダニエルの恐ろしさを音楽で語っています。彼が狂気に至っていく過程は、彼の口からはあまり語られないのですが、音楽で人物を語るという方法はとても新鮮でした。この奇妙な音楽の使い方もこれも好き嫌いが分かれると思います。(とはいえ、昨日は席が後ろだったから、あまり音楽は楽しめなかったのですが。)

試写会に応募しまくったほど見る前はかなり期待していたのですが、見終わったあとは「そこまでではなかったな」という印象でした。(いい映画だと思いますが。それに、長時間だったのにイスが硬くて疲れた、というのもありました。)でも、ずっとシリアスな展開なのに、クライマックスのシーンで笑えてしまったのは意外でした。

場面場面では、どういう意味なのかな?と理解できないところもありました。セリフで説明がある映画ではなく、映像で語る映画だったのでなおさらです。でも、成功物語に潜む人間の暗部を描いたこと、小さい村の人間たちの出来事でありながら、アメリカの縮図のような印象の映画を作ったこと、これは本当に巣晴らしいことだと思います。示唆に富んでいて、考えさせられる映画でした。

4月26日(土)から公開です。上映する映画館が少ないので、ご覧になりたい方はお調べください。

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